白井宏美先生

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白井宏美 Hiromi Shirai
総合政策学部准教授
【新入生へのメッセージ】
ドイツと日本ってもちろん文化、習慣等々違う面も多いですが、色んな人に出会った私の体験的には、ドイツ語圏の人々とは、すごく気質っていうのが合うなぁって感じるんですよね。一緒に仕事をしていても、約束は守るし、だいたい感覚が合うんです。暗黙の了解ってところが、分かり合えるところがあるんですね。日本の若者たちが、今後一緒に仕事をしたり研究したりするパートナーとしても最適なんじゃないかしら。いろんな面でもっと日本とドイツが力を合わせたら、世界の平和にもつながるんじゃないでしょうか。両国民に共通する真面目なところとか、綺麗好きなところとか、あと人間関係に関しても、最初はとっつきにくいけれど、ずっと長く大事につき合っていくところとかね。日独の交流がもっと盛んになったら、さまざまな面で素晴らしい効果が発揮されることになると思います。

 

□先生のドイツ語学習・留学時代

-まず最初に、先生がドイツ語を学習されていた、学生時代のお話を聞きたいのですが、始めたのは大学からですか?

そうそう

-始めたきっかけは?

始めたきっかけは、大学で第二外国語はとらないといけなかったのよね。大学に入ったら、英語以外の外国語を身に付けたいと思ってたの。それで、ドイツ語かフランス語かどちらにしようかなって思ってたんだけど、昔習ってたピアノの先生が、ドイツに留学されたことがあって、ドイツの街並みの写真を見せてもらったり、お話を聞かせてもらったりしてたの。それを思い出して、「すごく写真が美しかったぁ」って思い出して、さらにドイツの話なんかも蘇ってきて、それでドイツ語にしようかなって思ったのね。 それでね、神戸にドイツ語学校があるのね。私は大学で第二外国語もとるんですけど、この語学学校にも通ったんです。

-へ~一緒に!

そう、第二外国語だから仕方なく取ろうというのではなくて、英語以外の言語にすごく興味があって、その語学学校に大学一年生から通ったの。そしたらそこはコミュニケーション主体だから、今までの中学や高校でならった英語のやり方と全然違うのよね。だからすごく衝撃を受けて、最初はそういうの初めてだったから緊張したんだけど、やっぱりこういうの楽しいなって思って。文法書読むっていうのではなくて、コミュニケーションから入っていくっていうのが刺激的で面白いなって思ったの。それが最初ですね。

-英語以外の言語を極めたいって言うのは自然と思ってらしたことなんですか?

そう。というかやっぱり英語の授業が面白くなかったんですよね。中学高校とあんまりおもしろくないなあっていう感じがあって。使う機会もないし、なんかこういう勉強の仕方をしていても話せるようになる気がしなかったの。
それで全く別の外国語を、0から違う教育法で習ってみたいなって思ったの。最初からコミュニケーションというか、使えるものを習得していくっていうのを。どんな世界なんだろうなぁって思ってたんですよね。それはすごく楽しかった。最初はまだ身につかなかったし、恥ずかしかったし、大学一年生の頃ってまだ自信がなかったから大変だったけど。ドイツ語圏の人と会うのはそこが初めてだったしね。

-それがきっかけでコミュニケーション関係の研究とか、教授になるのを目指されたっていうのはありますか?

でもね、その時は全くそうは思ってなかったの。たとえば大学院に入るときも心理学をやろうかなっていうのと、ドイツ語学とどっちか迷ってたのね。学部の時は心理学だったの。でも結局、実際に授業受けたりとか聴講してたりしてたら、やっぱり好きなのはドイツ語かなって思って。ドイツとか、違う国の人とコミュニケーションとって、外にすごく世界広がるような気がしたのね。それをなんか、教えるんだったらドイツ語とかそれに関連するコミュニケーションだとかのほうが良いかなって思って、分かれ道分かれ道のところで選んで来たら自然とこうなったっていう感じかなぁ。

-先生が最初にドイツに行かれたのはいつですか?

最初はね、大学の三年生の夏休み。ハイデルベルク大学の語学研修に参加したの。

-ハイデルベルク!

ハイデルベルクの大学が開講している、夏季研修ね。そこで、初めてハイデルベルク行って、驚いたのその美しさに。「美しい~、すてき」って思った。やっぱりドイツ語習って良かった。こんな美しい街に一人で来られて本当に嬉しいと感激したの。
今でもはっきりその情景とか覚えてる。ある建物のとっても大きなドアですごく重たいのを、ガッチャンと開いたら、らせん階段がある。部屋がいくつかあって、それでベッドとかそのままあるところを私が使わせてもらった形だよね。そこに滞在できたっていうのが感動というか楽しかったよね。ちょっと屋根裏部屋みたいになっていて、天井もななめになってるんだけど、それがすごくうれしくて。やっぱり日本の生活と全然違うし、ドイツの学生になった気分で楽しかったわね、初めてのハイデルベルクは。

-夏季研修なのでドイツ語を勉強する世界中の方がいたと思うのですが、やっぱりドイツ語で外国人とコミュニケーションできる楽しさみたいなものはありましたか?

今から思えばそんなにドイツ語は出来ていなかったんですけど、本当にいろんな国の人と会って、皆低いレベルだけどなんとかドイツ語で話し合う、なんとかコミュニケーションするっていうのは、それまで20歳までなかったことだったので、すごい刺激でしたよね。スペイン、アメリカ、イラン、イタリア、ポルトガルから来ていたクラスメイト…今でも覚えていますね

-やっぱりインパクトが強かった

最初だったからね。

-その後にハノーファーに行かれたんですか?

そう。もうずっと後だけどね。ハイデルベルクは大学3年生の時なので、そのあとはね、ホームステイはちょこちょこ行ってたんですよね。それは勿論ドイツ語を学ぶっていう目的で、学生の身だから、ホームステイに行ったりとかいろいろしてたんだけど。
ハノーファーに行ったのは博士号取得のとき。ハノーファー大学のシュロビンスキー先生という先生が、日本に来られてたのね。講演会とかされてて。それで紹介してもらって知り合ったんだけど、先生はメディアコミュニケーションとかメディア言語とか研究されてたのね。その時はチャットが、使われ始めてきた時だったの。チャット・コミュニケーションの日独比較。ドイツ語はされてたり、ほかの言語は研究されてたんだけど、日本語だけがまだ無いとおっしゃってて。だから、もしチャット・コミュニケーションで、日独比較の分析、日本語の方のチャット分析を誰もしてないから、それしてくれるんだったら喜んで受け入れるっていう話をしてくださって。
それでもう是非っていうことで、その先生の所にいって、弟子についたの。向こうは大学院ていうものがないんですよ。先生の弟子につくっていう形なの。だからドイツに行ったときには同じように博士号をあと二、三年でとろうっていう男性が二人いて、丁度色々良くしてもらって。彼らは、先生のアシスタント的な仕事をしながら、博士論文書いて、先生の指導を受けるっていう形ね。その人たちとの出会いも良くって、すごく良い人たちで。親切にしてくれて、分からないこととかも教えてもらって。三人のうち誰が一番早く博士論文を書けるかなんて競い合ったりしながら、それが本格的な留学ですよね。その時は4年間いたんですけど、大学の授業も受けながら、単位取るものは授業出てレポート書いて試験受けて発表して、それをやりながら先生について論文を執筆して仕上げていったというかたちですね。

-じゃあ結構長い期間いられたんですね。一番つらかった時期とかってありましたか?

それまでの、ただ語学研修で行ってたのとは状況が違うから、やっぱり厳しかったですよね。博士論文を仕上げないといけないっていうのと、その後の仕事はどうなるかっていう不安がありましたね。日本から一人で来て、日々博士論文を書くためだけにいるわけでしょ。なので、そういう面で、精神的にちょっとこう、大変な部分はあったけれども。
それでも、日々は、一歩外に出れば、とてもきれいなドイツの街並みがあって。ドイツという国が好きだし、街並みも人も好き。私ドイツに行くと独特の匂いがあるなと感じていて、風だとか雰囲気だとか、ひんやりとした石造りの感じだとか、がすごく好きで。もうそこにいるだけで幸せというか楽しかったの。冬が長いと鬱になる人が多いって言うけれど、私は冬の景色や雰囲気も好きで。小さい頃に読んだ絵本の世界みたいで!暗くなって寒くなったらクリスマスのイルミネーションが始まるでしょう。ドイツのイルミネーションは、派手ではなくシンプルで統一感があり、一番好きなので。そういう中に浸っていられるっていうだけでもう幸せだった。勿論そういう精神的に大変だなっていうことはあったけれども、ドイツにいるだけで嬉しかったので、鬱になるとかそういうところまでは行かなかったです。心配はあったけど、日々は楽しかった。

-じゃあ、そのドイツにいる楽しさが、乗り越える糧になった?

そうそうそうね。ずっとこう勉強と論文執筆をしているんだけど、たまに息抜きにオペラとか行っていましたね。博士の学生なので学生証を持っているわけですよね、だから全部8€なんですよ、ハノーファーは。美術館もオペラハウスも劇場も全部学生は8€。だからオペラをみたり、若手の現代劇みたいなのを見てみたり、コンサート行ったり、そういうことが気軽にできるので、それはすごく良い気分転換になりましたね。
あと一番好きなのは、ドイツだと、たとえばオペラを観に行っても、まず建物が雄大で優雅で美しいじゃないですか。だからオペラを観て、そのロビーに出ても、夢から覚めないでいられる。日本だとすごくチケットは高いのに、ロビーに一歩出るともう自動販売機があって、なんかこう安っぽい椅子とか置いてあって、お手洗いには長蛇の列、みたいな感じで。もう一気に夢から現実に引き戻されて、興ざめなのよね。でもたとえばハノーファーでも、ベルリンとかミュンヘンみたいに大きくはないけれど、お手洗いとかは、各フロアに全部両脇にあって、並ぶ必要とかはなくって、しかもお手洗いの扉も壁の一部のようにさりげなーくあるのね。ロビーも美しいし、休憩のときでも、みんなちょっとシャンパンを片手に談笑していたりして優雅な雰囲気で全然夢から覚めない。しかも、オペラが終わって外に出ても、旧市街なので、街自体ももうそのままの世界なのね。私が住んでたのも旧市街の真中だったので、オペラやクラシックコンサートのそのままの世界でずーっと帰ってこれられる。観劇や音楽鑑賞した優雅な気分のままで、余韻を十分楽しんで帰れるっていうのが気に入っていたの。
そういうドイツの文化的なところ、豊かな気持ちで生活できるっていうのがすごく好きでしたね。だから冬になって暗い時間が長くなっても、あーロマンチックだなぁって。朝も、冬はすごく霧があって、青い空なんてほとんど見えないですよね。でも霧の街もそれはそれで、趣があるなぁって思ってたから、そういう意味ではぜんぜん辛くなかったですね。

□教師になってから

-先ほど将来の不安についてちょっとおっしゃられてたんですけど、最初からドイツ語の先生になろうと決められていたわけではないんですか?

うん、でもまぁドイツ語学をとっていたので、大学院に入る時点でドイツ語を教えるっていうのはだいたい決まってました。それに関連する講義を行うっていう形で。あとはその非常勤先を探す。非常勤先に応募して、確保しなければならない。その後は、専任にならなきゃいけないから、そういう準備。

-最初はSFCではないですよね?

そう、最初は4つの関西の大学で非常勤をしてたわけ。ドイツ語の授業で。だから2011年度にこちらに着任したので、今まる3年。
でもそれこそSFCの教科書『Modelle』はずっと使ってたの!コンセプトとか教授法とか、良いなって思ったの。内容も、これだったら実際にコミュニケーションを取る方法を身に付けられるなって思う一番のものだったの。大学によっては自分で教科書を決められるところもあったからね。そういうところではModelleを使ってた。でもあれって場面設定がSFCじゃない。「湘南台ってどんなところ!?」、「相鉄線ってなに!?」っていうことはあったけどね。

 

□SFCのドイツ語

-SFCのドイツ語教育の良さっていうのはどんなところだと考えてらっしゃいますか?

そう、だから続きでね。テキストがまず良い。テキストがまず1,2,3って体系的になっている。1,2は自分の身近なことを言えるように、特にSFCの学生には良いよね、SFCの内容が入ってるから。私が関西にいた時は関西の内容に置き換えてやってたの。つまり日本のことでも言える。3になって、実際にドイツに行って生活したり留学する中で必要な表現を使えるようになる。先ずは教科書が良いっていうのが一つ。
あと、ちゃんと教員のチームワークがとれている。普通の大学は、非常勤講師の講師控室っていう部屋が有るの。専任の先生と会うこともない。たまーに、一年に一回顔合わせとかね。それもない所もある。他の先生と話すこともないし、自分が授業に行って帰るだけ。でもSFCは、みんなドイツ語研究室に帰ってこられるから顔も合わせるし、授業の進み具合とかクラスの雰囲気の情報交換もできて。先生方が皆熱心だよね。みんな学生・履修者のことを考えていて、何か問題がありそうなら、みんなで考えて。履修者にドイツ語を身に付けてもらって活かしてもらいたいっていう気持ちが強い。みんな同じ教科書で、きっちり連携が取れているっていうのは、やっぱり素晴らしいよね。それが教員側。
また、ここにきて、印象的だったのは、学生も素晴らしい。すぐ習ったことを使って飛び出す人が多いじゃないですか。手厚く海外研修準備コースも作ってあるから、行くきっかけを作ってるとも思うけど。それにしても学生自身も、習ったことを使ってみようっていう人が多くいて、しかもそれでフィールドワークとか、自分の研究をしたりするひとがいる。ドイツ語を習うっていうだけでなくて、ドイツ語を使って新しい世界に飛び出す勇気を持っている学生がすごくいるし、実際に行動力もありますよね。そこから色々発展的な活動をしたり、自分の活動に行かしたりネットワーク広げたりっていうのが上手だなって思うので、そこも良い所ですね。

-白井先生ご自身が、ドイツ語を教えられる時に気を付けていらっしゃることはありますか?

日々のドイツ語の授業は、できるだけ分かりやすくっていうのは勿論なんだけど、どういう風にすれば学生が集中力を保てるかっていうようなことはすごく考えていて。やっぱりテンポよく、リズムというのも大事にするように心がけてるかな。あと声の、大きさとか、声の高さ、っていうのも考えて、できるだけ楽しいなっていう集中が途切れないように分かりやすくできるようにはしてるんですよね。全体の雰囲気作りも上手くやって行けるようになりたいと日々思っています。

-そんな中で履修者が成長するのが楽しいとか、教えてて何が楽しいっていうのはありますか?

もちろんね、日々の授業で学生が面白そうに楽しそうに反応してくれて、質問したらどんどん答えてくれるっていう、授業の活性化やみんなのやる気を感じると嬉しいですよね。他には、海外研修に行って「こんなにたくさんの友だちができた」とか「こんなことを学んだ」っていうことを、海外研修から帰ってくると発表してもらうでしょ。なんかそういう一ヶ月とか短い間でもかなり成長するじゃないですか。インテンシブコースだと週に4回授業だから、一年前に学習を始めた人でも、海外研修行って帰ってくるとすごい成長してて。なんだかいろんな意味で成長できたって聞くと、それは嬉しいですよね。

-何か履修者にこういうことしてほしいっていうのはありますか?

海外研修へ行く履修者がもっと増えると良いですね。行ってみるつもりで海外研修準備コースに参加したけれどもやっぱり研究会のほうも忙しいし、計画書を書き出したら自分がまだ何も考えていないことが分かったから先に延ばすっていう人もいますけど・・・。勿論それぞれのベストタイミングっていうのはあるから、慎重に考えるのも良いと思うけど、結局行かないっていうのはもったいない。だから迷ったら行ってほしい。迷うならチェレンジしてほしいですね。

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